自然と人間の共生した社会実現に寄与すべく、八ヶ岳南麓であれこれ考え実験した記録をつづります

名の知られざる少年の忠実な心

人は、自分が身近に接する人を
媒介にして、約1000人もの人々に
何らかの影響を与える可能性がある。

このような内容の記事
先日アップしました。

時に、周囲の人の心に深い
感動を当てる時、その伝播する範囲は
何百倍、何千倍にもなる。

そんなエピソードを紹介しまします。


1909年、シカゴからロンドンに
来ていたの出版業者が、
道に迷ってしまいました。
困り果てる彼のもとに
一人の少年が近づいてきました。

『何か私にできることはありますか?』

彼は少年に、行き先が
わからなくなったことを伝えます。 
すると少年は彼の荷物を手に取って、
丁寧に目的地まで導いてくれたのです。
 
欧米では、親切にしてくれたお礼に
チップを渡す習慣があります。
彼も当たり前のように、
少年にチップを渡そうと
ポケットに手を入れました。

しかし、彼がお金を取り出す前に、
少年はさっと敬礼をしてこう言ったのです。

『私はボーイスカウトです。
一日一善をさせてくださってありがとうございます。
スカウトは、人を助けることでお礼はもらいません』

そして少年は、
名前を告げることもなく立ち去っていきました。

このことに感動した彼は、
早々に仕事を済ませると、
イギリスのボーイスカウト本部で
スカウト運動のことを調べ、
ボーイスカウトについての書籍を集めます。
 
そしてアメリカに帰国すると、
当時のタフト大統領に、
スカウト活動のことを話しました。
 
これがきっかけとなり、
1910年にアメリカのボーイスカウト運動が
発足することになりました。

それから15年後、
アメリカのスカウトは100万人を突破しました。
 
それを記念して、スカウト活動を広める
きっかけとなったイギリスの少年に
功労賞を贈ろうとしました。
しかし、両国で調査をしものの、
少年が誰だったのかはわかりませんでした。

アメリカのスカウトたちは協議をし、
アメリカのスカウト功労賞である
バッファローの銅像を作って、
それをイギリスに贈ることにしました。
その銅像には、このような一文が刻まれています。

『日々の善行を努めんとする一人の少年の忠実な心が
北米合衆国にボーイスカウト運動を起こさせた。
名の知れざる少年のために』

このエピソードは「無名スカウトの善行」
として、今日まで静かに語り継がれています。

このエピソードのポイントの一つは
かの少年は、100万人の仲間を拡大しようと思って
親切をしたわけではなかったという点です。

彼はただ、自分の信条に従って
誠実な対応をしただけだったのではないでしょうか。

私たち一人一人の真摯な行動は
例えちっぽけなように見えても、
世の中を動かす大きな力になりうるのだと思います。